THE BAND OF
S H A D E S
SHADES LIVE REPORTS
2010-2011
2011年 10月9日 ライブ報告 恒例・秋のライブ at 新宿 メモリーズ(旧 キャロルハウス)
どういう理由だったか自分たちも分からないけれど、シェイズのライブはなんとちょうど一年ぶりの事になりました。
会場は新宿メモリーズというライブハウスで、一年前に演奏した場所なのですが経営上の都合でしょうか、店名を変えていました。しかし中身は変化なしという感じで、一年前もそうでしたが音もなかなか良くて、やりやすいステージを提供してくれました。
土曜休みの方には3連休となる中日の日曜、天気も薄曇りで穏やかな日和でした。
去年ここでやったライブは鍵盤姫欠場という大変困難な状況下で、バンド内でも後日その不消化ぶりが問題となった結果に終わりましたが、とにかく一年ぶりのライブです。 <満を持して>という気持ちはメンバー全員に等しく芽生えていたと思えました。
セットリストの構築は意外とすんなりと原型が整い、あとは曲順の検討だけでそれほど時間を費やす必要は無かったのも幸先の良いことでした。
この秋のライブは恒例化(高齢化?笑)しており出演バンドはほぼ固定化して、演奏するこちらとしては心おきなく(緊張せず)楽しめるという素敵な環境下にあります。
本番に先立ち、リハーサルではハウスPA担当の女性が不親切(失礼!)で、こちらがモニターが聞こえないぞ~と言うと「出してないですもん!」と言う始末。キーボードが鳴らないぞ~と言えば「OFFにしてますぅ」とのたまう調子で、僕なんかこのやろ~と内心思いつつ、一つ一つ細かく彼女に要求しながらステージ環境を整える必要がありました。
しかしこのコ、本番を他のバンドさんの音で聴く限りではなかなかいい音を出すんです。プレーヤーには彼女の対処法がイマイチ不満だったけどお客さんにはバランスのいい引き締まった出音(PA音)だったのです。
特にボーカルのバランスがよく、ハウリングを起こさずに音量がMAXにまでもっていく様子はなかなか嬉しかったです。ただしベースの出音はモニター音と共に不満でした・・・最後まで。
話は後先になりますが、全てが終了し会場を引き上げる際、僕は彼女を呼び出して礼を言ったのでした。
もちろんかなり年下のこれから頑張らなきゃならないコです。いい意味での注文を彼女の今後のために
しておきました。これが<オジサンのおせっかい>だとは思いましたが・・・。
でもこの子はメモをとっていましたので、もう会うことはないかもしれないけど笑顔で握手して別れたのでした。
さて前置きは終わりまして、お待ちかね、セットリストの公表です。
1 IMMIGRANT SONG (移民の歌: レッド・ツェッペリン)
2 FOXY LADY (フォクシー・レディー: ジミ・ヘンドリクス)
3 HEARTBREAKER (ハートブレーカー: フリー)
4 ONE DAY (ワン・デイ: ゲイリー・ムーア)
5 IT'S TOO LATE (イッツ・トゥー・レイト: キャロル・キング)
6 PRISONER (プリゾナー: バーブラ・ストライザンド、ジョー・ボナマッサ)
7 SO MANY ROADS (ソー・メニー・ローズ: ジョー・ボナマッサ)
8 MAKE UP (メイク・アップ: フラワー・トラヴェリン・バンド)
9 BURN (バーン: ディープ・パープル)
1:ほんのアペリティフ。1分半に縮小した、聴く人の期待を裏切る超ショート・ヴァージョン。
歌詞は無く、吠え声のみ。オクターブ・ピッキングが意外と難しい。
2:サウンド・チェックのようなウォーミング・アップ用の曲。テンポが早めで軽くなってしまった。
3:ミディアム・テンポでフリーの独特なブルーズを再現。各段落のサビ前にキーボードが合図のフレーズを難しい部分にも関わらず間違いなく弾いてくれたのでかっこよかった。
4:残念ながら亡くなってしまったゲイリー・ムーアへの追悼曲。エンディングに Still Got the Bluesのイントロを入れてみた。泣きたくなるようなメインのメロディをギターがよく奏でてくれた。
5:キャロル・キングの名曲をファンキーなリズムで再現。再演したい曲。
6:バーブラの原曲をボナマッサのアレンジで。中間部のギターの静かな泣きに思わず涙!
進行や仕掛けは意外と複雑。強弱の対比がうまく出来た。
7:ボナマッサのスロー・ブルースの名作。シェイズにとってもお宝音楽。もっと精進して腰の座ったプレイをしていきたい。
8:もちろん先に亡くなったジョー・山中のFTB時代の有名曲。 ドラムのフィルインが時代を感じさせる。
9:いつもの定番。いつの間にか我を忘れて大音量になってしまう、確信犯的演奏曲。コピー当初はあまりにも難しく苦労したものだが、最近はすっかりナメてかかって,粗いプレイになりがちなことを反省。
毎回懲りもせず大音量で迫るものの、どこか節制の効いた強弱加減は近年特に顕在化してきて、緩急のバランスと相まって、とても落ち着いたステージになってきたように思えます。
今回は2人のアーティストを追悼するという、本来ならイレギュラーなセットリストなのですが、これが思いの外にピタっとハマり、好評だったようです。
ちょっと脱線しますが、微妙な問題がありました。
それはセットリスト1,2,7のキーが<F>だということです。これは聴き手のみなさんにではなく、弦楽器(ウチではギターとベース)の問題です。
弦楽器にとって(これはバイオリン属もそうですが)チューニング(調弦)の関係上フラット系は<鳴り>が今一つなのです。
こういうことにこの場所で言及するのは僕くらいかもしれませんがフラット系の音楽は開放弦を使うのが難しいので鳴りの面から、古くはクラシック音楽時代から敬遠の方向にあります。
(♭1個のF、2個のB♭、3個のE♭)
反対にシャープ系(例えば#1個のG、2個のD、3個のA、4個のE)は開放弦を有効に使えるので音響効果がフラット系より強烈になりうるのです。
ついでに言うと管楽器(特に金管と木管の一部)はフラット系(F管、B♭管、E♭管)なのでフラットの付いた音楽が得意です。
脱線は終わりますが、楽器とキーはけっこう密接なもので、こういうことを論議してロックをやっていくのも面白いかもしれませんね。少なくとも僕は。
今回出演バンドはいつもと同じ4つ。
1番目のステージを踏んでくれたのは新登場のバンド。Jポップス系やAKBなどを楽しそうに、にぎやかにやってくれました。結成2カ月とのことですが、なるほど、練習不足は否めませんでしたね。
2番手の僕らの後はサポーターさんいっぱいのオールド・キッズさん。年々歳を重ねるにもかかわらず今回は今まで最高の元気なサウンドを放出してくれました。手慣れた曲が多いせいか楽しそうに演奏する姿は毎回見ものです。PAの出音も彼らには向いていたように思えました。また来年!
最後は主催のバンド、シェリー・ママ。
ずいぶん長いお付き合いをしています。数年前に一度<らしくない>音がしたことがありましたが、今ではすっかり自信がついたサウンドが復活しています。
先ほどの<楽器の鳴り>の話じゃないですけれど、バンドにもふさわしい<鳴り>というものがあります。
それが今、シェリーさんたちに復活したようすです。非常に気持ちの良いステージを展開してくれました。
シェイズと彼らは音楽における戦友みたいなものですから、今回の良い出来に僕らは拍手を送りたいです。
飲み放題であるはずの飲み物もだんだんと品切れが多くなり、チョイスの幅が減って、それでも心地よい熱気が満場を支配した頃、お開きの時間となりました。
外の様子を見に出ると、なんとシトシトと雨が降っているではありませんか!
昼間は好天だっただけに雨具の用意がないお客さんばかり、のはず。
ただただ申し訳なく思いました。
今回もシェイズの応援団やファンクラブ会員(MSちゃんが自称)の方などがたくさん来てくれました。
久しぶりにお会いする方もいらして会場では大いに盛り上がりましたね。
みなさん、ほんとうにご来場、ありがとうございました。
また金木犀が香る頃、秋のライブでお会いしましょう。
おっと、その前に次のライブをやるかもしれないですけどね。
2010年 10月10日 ライブ報告 恒例・秋のライブ at 新宿 キャロル・ハウス
月日の経つのは早いもので、年一度恒例の「秋のライブ」がまたやってきました。
今回は2年続けた江古田の会場「バディ」から新宿・歌舞伎町の「キャロル・ハウス」へと場所を変え、
新たな気分で参加4バンドが持ち前の元気さ・パワフルさを競い合い、それぞれの持つ「芸風」を前面に
出して陽気で楽しいライブを繰り広げました。
僕らシェイズも気心の知れた共演者さんたちと楽しくも有意義な時間を過ごせました。
最初にこのライブの関係者のみなさんにお礼を申し上げます。
さてシェイズ、今年の秋のライブは初めてメンバー一人が欠場という変則的な状況での演奏となってしまいました。
キーボード担当の鍵盤姫が抜けられない法事のため遠方に行ってしまったためなのですが、日頃からキーボードは我々の音づくりに不可欠な要素なので、ステージでのセットリストも苦しい変更を余儀なくされました。
普段はギターとベースのラインの隙間を埋めたり、自ら先頭に立って音楽をけん引したりしてくれている
パートが沈黙してしまうのですから、僕ら残されたメンバーが演奏のクオリティを維持するのに精いっぱいといった感じになってしまったことは容易に想像していただけるでしょう。
実際、キーボード・レスは初体験。
曲によってはほとんど前に出ないものもありましたが、鍵盤席に姫がいないというのは、やはりちょっと寂しく違和感がありました。
会場となった「キャロル・ハウス」はステージの横幅がけっこうあって、演奏スペースに各自ゆとりがありましたが、唯一ドラムの背中と壁が近くてウチのドラマーはピッコロ・スネアを叩く時に肘が背後の壁に当たってやりずらかったということはあったようですが、そんなことをのぞけば、PAの出音、モニターのクリアさ、各楽器のアンプの状態、会場内の音のバランスなどなど、まずまずの状態で演奏する方も聞く方も納得のいくクオリティの良さだったのではないでしょうか。
そのピッコロ・スネアのソロでまずはドラマーの登場です。少し遅れてギターとベースが揃うといよいよオープニングの#1です。
(曲にボーカルが乗るとピッコロ・スネアからメインのスネアに変わるという曲です)
5月のクロウダディでのライブでみなさんに初披露させてもらった<超難曲>で、これが2度目のお披露目です。細かいことを言えば多少雑な部分が見え隠れしていましたが、一瞬たりとも気を抜けない緻密でタイトな構成を無事最後まで演奏しきれたというのは一年前には考えられないほどの技術力の進歩だと自画自賛していいほどの出来でした。といっても満点の50%程度の出来ですが。
この#1で約10分を費やし、次にオーソドックスでオールドファッションのハードロック定番のような曲を#2と#4に用意し、その間にちょっとひねりのあるロリー・ギャラガーの曲#3を入れました。
実は#3はギターのボトルネック奏法が聴けるはずだったのですが、その場面になってもギタリストにその気配が無いのです。・・・彼はボトルネックをどこかに置いてしまったようで、とっさに普通のピック弾きで続行しましたが、あの時足回をのぞき込むようにキョロキョロしていたのは失敗でした。
あの場合は堂々と何事もなかったかのようにしていなければ、ね!
そしてこの#3ではボーカルの出だしも約半音近く下がった状態でスタートしてしまいました。
2番の歌では正常に戻ったのでよかったですが、そういった細かいミスが各楽器にも広がって、さすがにこの曲の演奏の歴史の中ではワースト1のNGぶりでした。
その後、ボナマッサ・セットリストからの定番曲を続け、ラスト#7はゆる~いブルース・ナンバーでリラックスして聴いてもらいつつステージを終えるというライブでした。
1 TAKIN' THE HIT
2 I GOT THE FIRE
3 CRADLE ROCK
4 MISSISSIPPI QUEEN
5 BRIDGE TO BETTER DAYS
6 A NEW DAY YESTERDAY
7 YOU UPSET ME BABY
全体的にはそこそこの演奏にはなっていたものの、メンバーそれぞれが不満足な部分を抱えた結果となったようです。
今後は今回のリベンジという意味でさらに練習を重ねて最強のパワー・ブルースを聞いていただけるようなお精進していきたいと思います。
ご来場のみなさま、お忙しい中ありがとうございました。
2010年 5月9日 ライブ報告 てきふら第49回ライブ at 新宿 クロウダディ
天気のいい日曜の午後、久しぶりに新宿歌舞伎町のスエた匂いの漂う街を歩きました。
夜ににぎわう場所なのにもかかわらずけっこう若い人がたくさんいます。
僕らは軽いウォーミングアップを隣町の代々木のスタジオで済ませ、お腹をすかせてこの街に入ったのでした。
時刻はすでに15時。ランチを取り損ねていた我々メンバーは、この辺りには意外と少ないファミレスをやっと探し当てて、数十分の待ち時間の末、遅いランチで腹ごしらえをしました。
実はこのライブ当日の数日前、バンドのマネージャー姫のお父様が亡くなるという悲しい出来事があって本番前のリハには全員が揃わないというアクシデントがありました。
それでメンバーの心にも多少の動揺があったライブ当日だったのでしたが、とにかく夕方からの会場での集合までちょっとのアルコールと高カロリー食で準備を整えて・・・参戦となりました。
さて本題に入ります。
今回のライブは過去のものとはちょっと違う気持ちで臨みました。
聞きに来てくれるお客さんには一切こびない選曲と、わずか40分のステージでしたが一人のアーティストの音楽にしぼって演奏したという意味ではバンド始まって以来のわがままステージとなりました。
こういうことが実現できたのは一にも二にも「てきふらライブ」というライブ・シリーズの「マニアックもOK」という雰囲気のおかげで、今回実に4度目のこのライブへの出演で我々のバンドのマニアックさもいよいよ極まったと思われました。
今回のライブは新宿の歌舞伎町というちょっと怪しげな界隈にあるロック・スポット「Crawdaddy」で行なわれたのですが、僕らシェイズにとっては2度目のこのお店での演奏経験でした。
前回もそうでしたがここのマスターをはじめスタッフの温かいサポートと応援、さらには機材の状態、PAの状態など、演奏環境のほとんどが我々にとっては心地よくリラックスできたのが最もうれしかった点です。
幸運なことに今回もまた共演者に恵まれ、僕らの友人「ニュー・シェルビーズ」や外人コンビの「ダーティ・T's」などの底抜けに陽気な連中に囲まれて、小難しいセットリストなのにもかかわらず僕らが肩ひじ張らない精神状態のまま全曲を完奏できたのはそんな彼らの雰囲気作りのおかげがあったせいと思っています。
また友人バンド「シェリーママ」のようこさん、せっちゃん、ぎっちょんさん、「ビハインド・ブルース」から島くんが日曜の夜にもかかわらず応援に駆けつけてくれたのには音楽仲間の熱い友情を感じ、感謝の気持ちでいっぱいでした。
開場後間もなく彼らの顔を見た時は「よ~し、がんばるぞ!」という気分になるから不思議です。
さらにいつも応援に駆けつけてくれるシェイズのサポーターのみなさんにも感謝しています。
真剣に聴いてくれたり、写真を撮ってくれたりと様々な応援をしていただきました。
さてこれが当夜のセットリストです。
1 BRIDGE TO BETTER DAYS
2 CRADLE ROCK
-MC-
3 TAKIN' THE HIT
4 SLOE GIN
5 A NEW DAY YESTERDAY
6 SO MANY ROADS
-MC-
7 YOU UPSET ME BABY
お話ししたように今回はアメリカの若きブルース・ロック・ギタリスト:ジョー・ボナマッサの曲だけでセットリストを組みました。
中にはジョーの作曲ではなく彼がカヴァーした「ジェスロ・タル」や「ロリー・ギャラガー」の曲も含まれていますが、ジョーのモダンなアレンジで蘇った往年の名曲が現代においても十分な説得力とパワー・ブルースの醍醐味を味あわせてくれるものとなっていることに僕らシェイズは惚れこんでいたので、原曲を知らない方も多いとは思いましたが<ボナマッサの作品>としてお披露目させてもらいました。
ステージは5人バンドには少々狭く、プレイ中にあまり動けないのが難点でしたが、メンバーが至近距離
にいるのでアットホームな雰囲気を保ったまま演奏できました。
今回の特色としてはまずステージングにおいて曲間をあまり空けず、前曲との色彩やムードのチェンジを連続的に行なったことがまず挙げられます。
従来のステージでは曲ごとに必要な音色(主にギターとキーボード)が異なるため、エフェクター類のセッティング変更やキーボードのトーン・バンクを変えるための時間がどうしても必要でしたが、そういうことも含めできるだけの時間短縮を試みた結果、ほとんどメドレーのようにセットリストがつながりました。
この<曲間を短くする>というのはお客さんの関心を途切れさせることなく引っ張り続けるという重要なテクニックの一つと考えられます。
これを有効に機能させるにはまず各曲のイントロを十分に検討し、キーチェンジによる音感の変化、リズムパターンによるグルーヴ感の変化、テンポによるフィジカルな変化をそれぞれ効果的に変化球のように連続投球できるように考えることなのです。
最終的に変化のある複数の音楽が組曲のように構築され、各曲にあるピーク・ポイントと全体を一曲と考えた時のピーク・ポイント(実は今回はツイン・ピークスです)を聞いているお客さんにバランスよく認知してもらえるように考えました。
M1は比較的ゆっくりなテンポと重めのノリでお客さんの心の準備をしてもらいます。さぁシェイズのステージが始りま~す!みたいな受け止められ方を期待しました。
技術的にはそれほど難しい曲ではなく、あくまでオープニング・チューンとして、またアイ・キャッチャー(イヤー・キャッチャーかな?)としてお客さんの視線を集める効果を狙った選曲でした。
遅めのテンポを持つ前曲からM2は一転してさっそうとしたリズムを持つ速めのロック・ナンバーをもってきました。ロリー・ギャラガーの往年の名作のボナマッサ版です。
ギターのボトルネック奏法も頻繁に出てきてギタリストは意外と忙しい曲です。イギリスのトラッド、あるいはアイルランド音楽の影響を感じさせる部分もあるスマートな曲展開がM1でまったりとしていたお客さんの耳には新鮮に感じられたと思います。バンマスとしてはもう少しグルーヴ感を出せたらよかったのに、という反省を込めた感想を持っています。
そしてM3で今回のセットリストの一つ目のピークを迎えます。
ボナマッサが今よりもっとハードロック寄りのブルースをやっていた頃の定番曲です。
僕が事あるごとに(曲名は伏せていましたが)これが出来ればバンドの経歴のピークを飾れるとまで言ってきた難曲中の難曲です。
この曲のスタジオ・バージョンは多少ゆるい調子で演奏されていますが、今回シェイズが取り上げたバージョンは2005年ころの最もハードロックだったボナのライブ・バージョン。演奏時間も9分におよび仕掛けが満載。しかも一度プレイを外すと曲についていけなくなる、ミスが許されないタイトな構成とテクニックを必要とします。だからこそ難曲と言っているわけで、メンバー曰く、「初めて聞いた時は絶対にコピーは不可能だと思った」と言わせた曲なのです。
こんな曲ができたらなぁ・・・この憧れにも似た気持ちは時間と共に強い征服欲みたいなものに変わっていきました。
無謀にもこの曲をやってみようと思って集まった最初のスタジオ・・・やはり熱い思いとは裏腹に完全ギブアップでした。それでも少しずつ前へ進んでいければいい、と萎える気持ちを鼓舞して3カ月ほど経過し、どうにかこうにか終わりまでいけた時は先ほど書いたように僕らのバンド活動の一つのピークを迎えたのではないだろうかという気持ちになったのです。
Low Dが必要なのでシェイズでは初めてギターの交換をしました。第6弦をDに下げたチューニングのヴィンテージ・アリア・レスポールは狙い通りの図太いサウントを出してくれましたし、それよりなにより僕らのギタリストの奮闘ぶりには本当に頭が下がる思いでした。
とにかく難しいテクニックが終始要求され、こんな曲があったからこそすさまじい征服欲が湧いたんだと思えるほどの難曲をよくぞここまでコピーし、人前で演奏できるまでになったものだと自分たちのことながら感動しました。
後半部への接続部でギターとベースの速いユニゾンがあります。バックを固めるドラマーにとっても恐ろしく難しい部分なのですがここをキメられたらみんなで親指を立てよう、と言って臨んだのですが、まっすぐ真上とまではいかなかったけれども斜め上くらいには指を立てられた結果だったように思います。
さらに精進して完璧を目指していきたい曲です。
ある意味で興奮のピークを迎えたM3が終わりステージ上ではピアノが静かに、しかし印象的なフレーズを反復し始めると曲はM4になります。
とてもブルージーで落ち着いた雰囲気が支配するこの曲で会場のクール・ダウンを狙います。と、同時に僕らプレーヤーの肉体的な休息もわずかながら取れるようこの部分にあえて置きました。
淡々と続くピアノの一定のパターンによく伸びるギターがかぶさります。こういうピアノ・プレイは意外と難しいもので、例えばラヴェルの「ボレロ」のスネア・ドラムのように持久力と表現力が必要です。
シェイズの鍵盤姫はよくがんばってくれました。
静かに消え入るようにM4が終わると間髪をいれず附点リズムのイントロをもつミディアム・テンポのロック・ナンバー、M5になります。このあたりのムードの変化もけっこういけてると思います。
ジェスロ・タルというバンドの曲ですが、原曲の持つある種のくどさを排除したスマートなボナマッサのアレンジが心地よいと思いこの場所に落ち着きました。ここで再びハード・ロックの面を前面に出して折返そうということです。
M5のエンディングはいわゆる「倍テン」という、フレーズはそのままにテンポが倍の速さになって勢いよく終わるのですが、実はここに伏線があって、このような終わり方の後に休みなくつながるスロー・ブルースのギターによるイントロが鮮烈に生きてくる仕掛けなわけです。
というわけで、全曲のもう一つのピーク、M6になります。
スローなマイナー・ブルースなんですがクールな仕掛けが挿入されていて、ロックな一面ものぞかせて、全体にはこれぞボナマッサと言えるようなパワー・ブルース・ロックになっています。
シェイズのギタリストがある時いみじくも言っていたのが印象的だったのでここに書きますが、「M3はテクニックを極めるための曲であり、このM6は表現力を養うために不可欠な存在だ」・・・なのです。
マイナー・ブルースのお決まりのコード展開のシークエンスに巧みに入れ込まれたロックっぽいフレーズがともすれば単調に流れて行くブルース形式を一時的に止めて、印象的で巧みな曲構成に成功した良い例であると思います。
この曲のキモはやはり曲の出だしでいかに前曲のイメージから劇的なチェンジを聴かせるかでしょう。
前曲からキーが半音上がるのですが前曲との曲間が短いほどこの効果は絶大で、それが今回のステージではみごとに成功しました。(間があくと半音上がる印象が薄れるのです)
イントロとともに濃いブルースの世界が開かれた瞬間の客席に注目していました。 会場はライトがやや近い所に眼つぶし的にセットされていて、最前列から2-3列までのお客さんの顔しか判別できない状況だったのですが、この劇的変化の瞬間に僕らに聞こえてきた客席からの驚きとも感動ともつかない「お~!」というどよめきが今夜のステージの成功を暗示していました。
今回のためにウチの鍵盤姫が購入した高価なハモンド・オルガンも功を奏し、なんともいえない独特な音のカーテンを揺らしながら音楽に推進力を持たせた姫のバッキングには思わずニヤっとさせられました。
素晴らしい瞬間を聞かせてくれたギター・プレイとハモンド・プレイにお礼を言いたい気持ちです。
さて基本的にはM6をもってセットリストの本割は終了ですが、このスロー・ブルースでステージをしっかりと締めくくられるほどの実力もない我々なので最後の曲に「愛想の良い」アップテンポのシャッフル系ブルースM7を演奏することにしました。
意外に思っていたのですがなぜかバンドのメンバーはこの曲のセットリスト入り、しかもラストに置こうという僕(バンマス)の意見に消極的でした。僕は以前よりこの曲の持つ華やかさが好きで、たいしてベースが面白いというわけでもないのですが、ボナマッサだけをやるというワガママ・プログラムにおいては、この曲の持っているサービス精神がステージを締めくくるのには最適と思えたので「やる!」と決めたのでした。
結果、思っていた通りお客さんの手拍子でノリノリのままエンディングを迎えることができました。
それにメンバーみんなのプレイが、あたかもそれまでの強いプレッシャーから解放されたかのように実に伸び伸びと明るく響いて、いいステージの引き際となったと思いました。
今回のステージは「魔物の降臨」(演奏ミスや機材トラブルなどによる強制中断)もなく、せいぜい小悪魔がちょこっと各自のプレイ中に忍び込んだ程度で、全体的評価は高いものとなったのではないでしょうか。
いつの日か今回のこのセットリストをどこかで再演したいと思うのは僕だけではないでしょう、きっと。
かなりの長文レポ(5200字)になりましたが、最後まで読んでいただいてありがとうございました。
ライブ主催のロックバー、テキサス・フラッドのマスター、会場のスタッフのみなさん、そして応援にお越しいただいた音楽仲間・サポーターのみなさん、ありがとうございました。
以上です。
2010年 1月16日 ライブ報告 新年最初のライブ at 藤沢 インタープレイ
人間の記憶なんてけっこういい加減だと思っているので、バンドのライブがあった時の「ライブ・レポート」はステージでの録音と映像をチェックしながら思い違いが無いように書いている。
シェイズにとっては去年の「町田ライブ」を超える遠い場所でのライブとなった。
会場へのアクセス方法もメンバーそれぞれの都合のいい行き方で現地集合となったのだ。
今回のライブは以前からいろいろお世話になっている<プロモーター>の三浦さんによるお誘いを受けてのものだ。
当初は神奈川の女性ハードロックバンドとのロック対決を目指していたのだったが、先方の都合もあってとん挫した。
その後、対バンとしてベンチャーズを中心とした活動を続けているバンドさんと、シャドウズ命のバンドさんとが僕らと共演してくれることになった。
彼らはクリア・トーンで会場を包み込み、有名な曲を惜しげもなく披露してくれて、場を和ませてくれた。
みんなが知っている曲はお客さんのノリも当然いい。
じゃ、シェイズはというと、頑固に自分たちの信じた愛着のあるハードロックを爆音でぶちかますスタイルを変えない。
きっと穏やかで楽しげな音楽を奏でる二つのバンドさんにはさぞ迷惑だったことだろう。
ビルの5階にあるライブハウスも他のフロアへの音漏れに神経を使ったことだろう。それでもシェイズは爆音隊なんだ。
リハの時点でも「音量を妥当なものにするように」と内々にお達しがあったのだが、ライブDVDを見たら、一曲目の出だし直後にはもうギターがアンプのボリュームを上げていたし、バンマスの僕もベースの音量を<心持ち>上げたりしているシーンがある。
音を控えたハードロックなどはあり得ない、というのが僕らの標準。
なので後で謝る覚悟のボリューム・アップなのだ。
ステージは思いのほか狭く、ウチのドラムスなどは肘が後ろの壁に時折当たるようで気の毒だった。
さらに、ドラムスのタムがシングルだったため、スネア~タムタム~バスタムと行くしかなく彼のフィルインにはかなりの制約があったと同情する。
しかしながらそこはウチのドラムス。
だてに長いことドラムを叩いているわけではない。いつものフィル(おかずとも言う)をコンパクトに、時にはあたかもツイン・タムであるかのようにまとめあげて、タム数不足の不自由さを聴衆には感じさせなかったと思う。これは考えてみるとすごい技術でもあるわけで、やはり同じリズム・セクションとしては彼への信頼度はいやがおうにも増していく。
藤沢のステージではキーボードがライン取りで専用アンプは使用しなかった。キーボードの姫の足元にはモニター・スピーカーが用意され、それで弾いていた。
PAの卓に直接インプットされたキーボードは非常にクリアで分離が良く、時には目立ち過ぎなくらいの音を放出していた。
しかしこの姫のステージでの太っ腹ぶりは(こういう表現がふさわしいかどうか、分からないが)、ライブを重ねるたびに濃くなっていくようだ。
時にはバンドのアンサンブルをリードしていくような大胆さがあって、非常に頼もしい限りだ。
さらに姫はハードロック・バンドというキーボード・プレーヤーにはやや特殊な立ち位置にいる。すなわちリフがユニゾンで鳴っている時とコードによるバッキングでは明らかに奏法を変えなければならない。
それに僕らの必要に応じて音色を目まぐるしく変化させなければならない。ソフトなトーンや弱音からのクレッシェンドにも絶えず気を配る必要がある。
でもそういったことはすでに彼女のプレイスタイルにインプットされているようで、苦な顔ひとつ見せずにいつもニコニコしている。
今回の藤沢ではバンマスとして一番集中して彼女を聞いていた。 お飾りでチャラチャラ弾くような立場ではない、重要なポジションを担っている彼女にさらなるふてぶてしさを期待したいと思う。
今回、ウチのギターは音量を心もち控え目にしたようだ。
対バンさんの弾くクリアなギターの音とハードロック特有の歪ませた音とはその伝達力が違う。
クリアな音は直進性というよりも拡散性があるものだ。反対にウチのギターのトーンは広がらない。言い換えるととても指向性の強い音なのだ。
会場内に響き渡るギターサウンドにするにはトレーニングを積んだミキサー(PAスタッフ)が必要である。特に僕らシェイズの音楽はボーカルとギターの2つのフロントが全てのカギを握る。
幸い藤沢のボーカル・システムは程よく分離した混濁のない歌を聞かせてくれたが、一方のギターのPA音の寂しさは残念だった。
これは他のバンドさんには当てはまらず、ディストーション・サウンドを多用した我々だけのニーズであるのだが。
さて、ライブ(ステージ)に対する感想は二つの立場があって、それぞれ微妙な違いが出ることはよくあることだ。
プレーヤーは自分のプレイというものを当然ながら熟知しているのであって、微妙な失敗とか突然頭の中が真っ白になって、プレイに隙間ができることがある。
僕らはそれをミスとするが、聴衆はというと意外にもそれを認知していないことが多い。
聴衆は音の全体の中に浸り、プレーヤーは演奏中の孤独におびえている。
自分を信じてプレイしないとアンサンブルは成立しない。
聴衆は全体の雰囲気を大まかに受け取って評価する。
なので、ステージ終了後に僕らがしばしば感じてきた「今回は失敗が多かった」などという感想は時として聴衆の感想と一致しない。
このギャップに常に客観的に聴きながらプレイしているバンマスの僕は混乱する。
軽薄なアマチュア・バンドならお客に受けたということだけで有頂天にもなるだろう。
僕らも受ければそれでいいのか、という命題にはいつも悩む。 だって、自分が不完全なプレイをしたのにそれでもOKなどという単純な気持ちにはなれないからだ。
かと言って聴衆を見くびってもいけない。ほとんどの聴衆は僕らの些細なミスには気づかない。「ミスを気づかれない」というのはバンドのテクニックの一つだが、僕らのように36年もバンドを組んでいると、そういう<だまし>は喉につかえた魚の骨のようなものに思える。
パーフェクトという演奏は期待できなくても、僕らのバンドにはバンド内基準と言うものが明らかに存在しているわけで、今後その基準値をライブや練習を重ねることによって、だれに聴かれても恥ずかしくないようなレベルにまでもっていきたいと望んでいる。
ではセットリストを書いておこう。
<藤沢セット>
1 Bridge to better days
2 Make Up
3 Burn
4 Sloe Gin
5 A Newday Yesterday
6 Lazy
7 Rock Bottom
#1.4.5.は僕らが敬愛するジョー・ボナマッサの曲。
#2.はフラワー・トラヴェリン・バンド。
#3.6.はディープ・パープル。
#7.はUFO、マイケル・シェンカーの曲。
今、シェイズはレパートリーに変化がみられている。 今までずっと定番としてやってきた曲はいったんお休みにして新たなシリーズを組みたいと思っている。
今後のライブを乞うご期待といったところだ。
藤沢までわざわざおいで頂いたお客様にバンド一同、心からお礼いたします。
ありがとうございました。